2021年5月12日水曜日

トヨタ生産方式

製造業に従事している人には非常に参考になる内容だと思った。

製造業ではなくても、トヨタ自動屋には豊田自動織機の蓄積があったからこその自動車だったのだなとわかり、やはり繋がりはあるものなのだなと。

トヨタが創業当時から、基礎材料の研究に重きをおいていたというのもすごいし、やはり事業の中で重量なところの技術には基礎研究のレベルから取り組む必要があるということだろう。

カイゼンやカンバンは有名であるが、Just in timeの思想を具体化するために生まれたものであり、一朝一夕ではなく数年かけて広く普及させていたのが印象的である。

また、高度経済成長期においても大量生産の流行に流されることなく、自分たちが重要と思うことに邁進することの重要性が説かれていると思う。

現代のAIやBigDataの流行に乗って、それらに手を出したところで、それが事業の成長のために必要だから行っているのではなく、流行に乗っているだけだとしたら、AIやBigDataに投資したものや人がゆくゆくは無駄になり、経営の足かせになりそうだなと感じる。


トヨタ生産方式

トヨタ生産方式を分解すると、はじめに 「トヨタ式のつくり方」 がある。 生産現場 に流れをつくることである。 従来のは旋盤、フライスはフライスとかためて 置くのではなく、旋盤、フライス盤、ボール盤といったように工程順に一台一台並 べて配置する。 それにそって従来の一人一台持ちから「多数台持ち」、正確には「多 工程持ち」 へ移行し生産性を向上させた。 もう一つは「トヨタ式のつくり方」にのっ とった「ジャスト・イン・タイム」 生産をするための運用手段としての「かんばん」 方式である。 必要な品物を、必要なときに、必要な量だけ手に入れるために、 「かん ばん」は品物の「引き取り情報」または「 運指示情報」として、また生産工程に おける「作業指示情報」として有効に機能する。


ジャスト・イン・タイム

必要な品物を、必要なときに、必要な量だけ手に入れることができれば、生産現場 のムダ・ムラ・ムリをなくし、生産効率を向上させることができる。 これを発想した 本家本元はトヨタ自工の創業者・豊田喜一郎であり、その発想を後継者たちが展開さ せ、 生産システムにまとめ上げた。単なるイン・タイムではなく、ジャスト・イン・タイムであることが重要なポイントである。 「ジャスト・イン・タイム」は、つぎの 「自働化」の思想とともに、トヨタ生産方式の二大支柱をなす。


自働化

トヨタ生産方式にあっては、あくまでニンペンの付いた「自痴」でなければなら ない。 「自動化」とは機械に人間の知恵を付与することである。 「自動化」の発想は トヨタの社祖である豊田佐吉の自動から生まれた。 豊田式は、糸がき れたり横糸がなくなったりすると、機械は直ちに停止する仕組になっている。すなわ 機械に良し悪しの判断をさせる装置がビルトインされているのである。 トヨタで はこの考えを機械だけでなく作業者のいるラインにも拡大している。すなわち、 異常 が発生したら、作業者がラインをストップさせることを徹底している。 「自動」に よって、不良品の発生を防止し、つくり過ぎを押えることができ、また生産現場の 常を自動的にチェックできるメリットがある。


目で見る管理

「自働化」には異常があったら、ラインまたは機械を止める意味がある。この考え 方の基本は、何が正常で何が異常かを明確にすることにある。 品質でいえば不良を表面化させ、量でいえば計画に対して、進んでいるのが、目で見てすぐわかるようにす る。 機械やラインだけでなく、ものの置き方・手持ち量・「かんばん」のまわし方・ 人の作業のやり方、すべての点に当てはまる考え方である。 トヨタ生産方式を導入し た生産現場においては、「目で見る管理」が徹底している。


アンドン

「目で見る管理」の代表はアンドンである。これは生産現場にかかげられた 「ライ ン・ストップ表示板」である。 異常表示灯について説明すると、運転中は緑色を点灯 する。作業者がたとえばラインの遅れを調整しようと助けを呼ぶときには黄色を点灯 する。異常を直すためにライン・ストップが必要であれば、赤色を点灯する。 異常を 徹底的に排除するためには、ラインがとまることを恐れてはならない。


かんばん

「かんばん」とはトヨタ生産方式の第一の柱をなす「ジャスト・イン・タイム」を実 現するための管理の道具である。 四角のビニール袋の中に小さな紙切れを入れたもの が多く使われている。その紙切れには、「なにをどれだけ引き取るか、また「な にをどのようにつくるか」が示されている。 後工程が前工程に必要な品物を、必要なときに、必要な量だけ引き取りに行き、 前工程はその引き取られた分だけつくっ て補充するのが「ジャスト・イン・タイム」 生産であるが、この場合、後工程が前工 に引き取りに行く、この間を「引き取り情報」または「運搬指示情報」としてつな ぐのが、 引き取りかんばん」、または「運搬かんばん」という。 「かんばん」の重要な 役割の一つである。 もう一つ、いまの前工程が引き取られた分だけつくるために、生 産を指示する 工程内かんばん」がある。この二つの「かんばん」が表裏一体となっ て、トヨタ自工の工場内の各工程間、トヨタ自工と協力企業との間、またそれぞれの 協力企業内の各工程間・・・・・・こういった具合に、 「かんばん」が回っている。ほかにや むをえずロット生産しなければならない、たとえばブレス部品の生産に使われる 信 号かんばん」がある。 「かんばん」は人間の意思が込められた、いわば「情報」である。


五Wを自らに問え!

問題点を発見するには、「なぜ」を五回反復してみよ。 これこそトヨタの科学的ア プローチの基本態度である。すなわちトヨタ生産方式においては、五Wは五つのWH である。「なぜ」を五回くり返せば、本当の要因がわかり、どうすればよいか (how)もわかってくる。


「原因」より「真田」 

「原因」の向こうに真」がかくれている。いつの場合も、「なぜ」「なぜ」と 原因を掘り下げ、真をつかんで対策しないと、有効なアクションに移ることがで


「省力化「省人化」→「少人化」

高性能の大型機械を導入すると、人間力を省く、つまり「省力化」は実現できる。 しかし、より重要なのは、その機械によって人を減らし、必要な部署に回してやるこ とである。 「力化」して工数がたとえば九人分っても意味がない。一人が ってはじめて原価に結びつくので、「人」を達成しなければならない。ホコ さらに新しい目標が設定された。「人」である。「人」を目ざして 「自動化」を進めてきたが、になったとき、生産量の減った分に比例して人を抜 けない。これは「自働化」が定員制になっているからである。 低成長時代には、この定員制を打破して、何人でも生産できるラインをつくり上げる より、知恵をしぼる必要がある。これが「少人の狙いである。


「動き」 「働き」にする

いくらよく動いても、働いたことにはならない。「働く」とは工程が進み、仕事が でき上がることで、ムダが少なく効率の高いことである。 管理者は部下の「動き」 「働き」に変える努力をしなければならない。


ムダを認識し撲滅する

ムダを認識するには、具体的にムダの性格を分類しなければならない。 生産現場の ムダを分類すると、ゆっくり過ぎのムダ、②手持ちのムダ 運搬のムダ 加工を のもののムダ 在庫のムダ、動作のムダ 不良品をつくるムダ、以上のような ものがある。 たとえば「つくり過ぎのムダ」についていえば、 下の低成長時 代、それは企業にとってのロスというよりは、社会にとっての罪悪といっても言いす ぎではない。 ムダのは企業にとって至上命である。


バカヨケ

生産工程内で一〇〇パーセント良品をつくるためには、治工具・取付具にいろいろ 工夫して、不良品の発生を未然に防ぐ仕組みが必要である。 これを「バカヨケ」とい り。 「バカヨケ」にはたとえばつぎのような仕組みがある。 作業ミスがあれば、 品 物が治具に取り付かない仕組み。 ②品物に不具合があれば、機械加工を始めない仕組み作業があれば、機械が加工を始めない仕組み。 ④作業を、 動作ミスを 自然に修正して、加工を進める仕組み。 前工程の不具合を後工程で調べて、不良を m 止める仕組み作業忘れがあれば、つぎの工程が始まらない仕組みなどである。


標準作業の徹底

トヨタ生産方式では「ジャスト・イン・タイム」 生産をしているため、各工程の 準作業表は、簡潔に明確につくり上げられていなくてはならない。 標準作業の三要素 とは、 一台あるいは一個を、何分何秒でつくらなければならないかを示す「サイク ル・タイム」、②時間の流れとともに作業していく作業順序」、 3 作業を続けていく ために必要にして最少な工程内の仕掛品、つまり「標準手持ち」である。


「流れ作業」と「流し作業」 

「流れ作業」は品物が流れている間に、各工程で加工され価値が付加されていくこ とである。コンベアを使って品物を運搬するだけならば、それは「流れ作業」でなく、 「流し作業」である。 トヨタ生産方式の基本条件として、生産現場に「流れをつく る」ことがあげられるが、 ちろんそれは「流れ作業」をつくり出すことである。


多工程持ち

たとえば、 機械加工の工程において、いまに平行して、フライス盤、ボール といったように、生産の流れにそって、おのおの五台ずつ並んでいたとする。 ここ で一人の作業者が五台を扱うことを「多数台持ち」という。フライス 五台、ボ 1ル五台を扱うのも同様である。 それとはべつに、一台の旋盤、 一台のフライス盤、 一台のボール盤といったふうに、一人の作業者が、多数の工程を担当することを 「多工程持ち」という。 トヨタ生産方式においては、生産の流れをつくることを重視 しているので、あくまで「多工程持ち」の実現に努めている。これは「少人化」に直 結する。生産現場の作業者にとっては、 「単能工」から「多能工」へと進むことになる


バトンタッチ・ゾーンをつくれ! 

水泳におけるリレーでは、速い人も遅い人も一定距離を受け持つが、陸上のリレー では、バトンタッチ・ゾーンで速い人は遅い人をカバーすることができる。 ライン作 業においても、陸上のリレー方式が望ましい。 監督者はラインの能率向上のために、 バトンタッチ・ゾーンをつくっておくことが大切である。


離れ小島をつくらない

作業者がポツンポツンと配置されていては、お互い助け合うことができない。 仕事 の組合せを工夫して、助け合いができるような作業配分なり作業配置をすれば、 「少 人化」にも結びつけることができる。 生産現場に生きた流れをつくると、離れ小島生まれてこない。


生産の平準化

生産現場において、製品の流れ方がパラックほどムダは多くなる。 設備、人、在庫その他、生産に必要な諸要素が、 必ずピークに合わせて準備しなければならないから である。 後工程が時期と量についてばらついた形で引き取ると、そのバラツキの大き 前工程へさかのぼるほど広がっていく。 外部の協力企業をも含めて、すべての生 産ラインのバラツキを防止するためには最終の組立ライン上のバラツキをゼロにする。 努力をしなければならない。 トヨタ自工の各最終工程は同じものをかためて流さない。 一台一台、違った車をつくる前提で、平生産を行なっている。


ロットを小さく、段取り替えをすみやかに

生産の「平準化」のために、ロットはできるだけ小さくする。旧来の計画生産ではロットは「多々ますますかず」であった。 最終組立工程でいえば、できるだけ同じ種 類の車を流さないようにする。 最終の組立工程がロットを小さくしていくと、とうぜ ん、前工程のプレス部門もそれに応じていかなければならない。 プレスの型を変える、 つまり「段取り替え」をひんぱんに行なわなければならない。そのほか、すべての工 も同様である。 プレスは一つの型でできるだけたくさん打ち続けることがこれまで の常識であったが、トヨタ生産方式では、その常識が通用しない。 段取り替えをすみ やかに行なわなければならない。 段取り替えのスピードは訓練によって速まり、昭和 二十年代、 二~三時間であったのが、三十年代に一時間を割って一五分となり、現在では三分にまで短縮されている。


ライン・ストップを恐れるな!

止まらない生産ラインは、すばらしく完成されたラインか、それとも大きな問題を かかえているか、のどちらかである。 たくさんの人間がラインに配置されていれば、 流れは止まらず、問題も表面化してこない。 これはまったくダメなラインである。 肝 心なことは、必要に応じていつでも止められるラインにしておき、それによって不良 品を生み出すことを防止し、少ない人間で改善を重ねつつ、最後には止める必要のな い、体質の強いラインをつくり上げることである。 ライン・ストップを少しも恐れる必要はない。


必要数生産量

トヨタ生産方式において、生産量とはすなわち市場の必要数である。したがって、 必要数とは行きである。 市場ニーズが生産現場に直結しているので、生産現場で 手に生産数量を変えることができない。 能率向上も必要数を前提として行なわれなけ ればならない。これによって、つくり過ぎのムダを防止することができる。


稼働率と可動率

「稼働率」とは、その機械が一定時間内にフル操業したときの能力に対する、現時 点での生産実績である。 行きが悪くなればとうぜん下がる。 反対に注文が ふえると、残業や交代勤務によって二二〇パーセント稼働もありうる。この稼働率の 良し悪しは必要数に対する設備の選択の問題である。 トヨタ自工でいう「可動」とは、動かしたいときにいつでも動く状態をいう。 これは一〇〇パーセントが理想であ る。このためには、保全が確実に行なわれていなければならないし、また段取り替え 時間の短縮がはかられなければならない。


作業改善から設備改善へ

生産現場の改善案を大別すると、作業上のルールを決めたり、配分をやり直したり、 物の置場を明示したりする「作業改善」と、装置を導入したり、設備を自動化したり する「設備改善」とがある。 「設備改善」にはお金がかかり、しかもやり直しがきか ない。 トヨタ生産方式では、まず作業の手順化、標準化を徹底する。それによって大 半の問題点は改善できる。 「設備改善」が先行すると、生産現場は「作業改善」をし ないようになる。 「作業改善」が行なわれてから「設備改善」が行なわれるべきであ


もうけるⅠE

IEすなわちインダストリアル・エンジニアリングはアメリカから入ってきた生産 管理技術であり、経営管理技術である。その定義はさておいて、トヨタ生産方式では、 生産現場全体に及び、質・量・タイミングの調和のうえにコストの低減をはかる「製 造技術」であるとする。 たんに学者の世界で論じられるIEの手法(メソッド)では なく、原価低減に直結する「もうけるIE」こそ「トヨタ式IE」 のいちばんの特徴 である。

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