2020年1月30日木曜日

バッタを倒しにアフリカへ

博士課程に進むことがいかにリスキーかを教えてくれる。
著者は楽しいと思うし、こういう生き方があるというのを広められるのは素晴らしいともう。
子供に選択の幅があることを伝える本であると思う。
それと同時に本気で博士を目指すなら、この本にあるような異常な苦労が待ち受けていることをきちんと高校生くらいになったら知るべきかなと思う。

これだけの活動をして、おそらく博士の中ではエリートに属すると思うが、それでも40近くても任期付きの職にいるのであるから大学の世界は非常に厳しいと感じる

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)   前野ウルド浩太郎 https://www.amazon.co.jp/dp/4334039898/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_CsBmEbNRTFSHS

平成金融史

平成のバブルの発生から現代までを追ったドキュメント。
バブルといえば、派手なイメージしかないし、景気の過熱と思っていたけど、長期的に低金利で、高金利はバブルがはじけ始めてからというのがわかる。
金利を上げたいけど、物価上昇がないから金利を上げられない日銀が招いたことと言われても仕方がない気もする。将来を全員が予想できると思う始めると過剰にリスクを取り始めて、それがバブルにつながるということだ。
現在も、低金利が続いていて株価が上がりつつあるので、当時と近しい部分もあると思う。当時と違うのは株価の上昇のそれなりの割合が、日銀による買オペの結果だということだろうか。

自分のように80年代生まれだと、この本に書いてあることを子供のころから実際に見ているので、非常に面白い。
「中央銀行」を読んだ際にはみんな官僚なども含めてバブルに誠実に向き合ったような印象を受けたが、実際には自分の任期中にはトラブルを起こしたくない官僚や大きすぎて潰せないと思い込んで、もはや退場すべき会社を生き永らえさせているような政策をとってしまう日銀や政府といった面も見えてくる。
退場すべき会社の下支えは現在も行われているように思える。日銀の買いオペは、その例といえると思う。

今では考えられないが、昔は都市銀行が21行もあり、それが統廃合を進めた結果3つになったのだから驚きだ。

不良債権処理計画も当初から10年単位の計画が組まれており、失われた10年などというが、失われるのが計画された10年といえる気もする。

当たり前ではあるが、現代へとこれらの状況が地続きであるから、現状の日銀の資産や打ち手の出口の見えなさなどに不安を覚える。


https://www.amazon.co.jp/%E5%B9%B3%E6%88%90%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%8F%B2-%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%BE%E3%81%A7-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8-2541-%E8%A5%BF%E9%87%8E-%E6%99%BA%E5%BD%A6/dp/4121025415

2020年1月16日木曜日

イスラム教の論理

著者の飯山 陽は、他のイスラム教の研究者からは批判されることもあるようだが、本書は明らかに良書。
西洋の価値観と違った価値観の世界があることを記述している。
社会主義国家に対しても言えることではあるけど、西側の視点でだけ世界を見るのではなく、いろんな視点が存在するという事実を認識するのは大事だと思う。
内容的には、イスラム過激派がコーランをどのように解釈しているのかを繰り返し述べている。
ちょっと内容的には、繰り返しが多い気もするが、それだけテロを正当化する論理にバリエーションがあるということなのだろう。
イスラム教の論理ではジハードを根拠としたテロ行為を論理的に否定することは難しいという現実があることは分かった。

他のイスラム教の研究者から嫌われるというのもちょっとわかる気がする。
日本人が感じるイスラム教への違和感などについて、正面から一つの回答を出そうとしているだから、それが出来ていない研究者からしたら目障りにはなると思う。
学者としては、回答がない疑問への答えを見つけようとする試みは、褒められるべきだが、そういった評価ではないというのは、日本のイスラム教の研究者社会は学術的価値をあまり生み出していないのかも等と邪推してしまう。

https://www.amazon.co.jp/dp/410610752X/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_70YhEb5AM6FFJ

2020年1月14日火曜日

良いコードを書く技術

表紙や中身の漫画から内容が薄いかなと想像したが、思ったよりも良書。
普通に名前付けの章とか参考になる。

ライブラリ/フレームワーク
*Scope, *Loader, *Engine, *Provider, *Conversion, *Behavior, *Descriptor, *Cache, *Resolver, *Processor

GUI/フレームワークを拡張する部品
*Listener, *Hander, *Runner, *Command, *Observer, *Node, *Adapter, *Proxy, *Holder, *Context, *Monitor, *State, *Builder, *Factory, *Visitor, *Decorator, *Strategy

アプリケーション
*Action, *Controller, *Dto, *Logic, *Service, *Util, *Entity, *Helper, *Support, *Dao, *Manager, *Bean, *Form, *Exception, *Validator, *Test, *Impl

一部、使わないほうが良いものもあるきもするけど。。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07JHP988R/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_QAjhEbS2N82KZ

中央銀行

これ、かなり面白かったです。

僕と同年代の人なら概ね面白く読めるのではないかと思います。
35歳前後。

学生時代とか社会人なりたての頃にテレビで行われていた経済についての議論の中心にいた日本銀行の総裁の書いたもので、当時感じていた違和感に対する日本銀行の中の人が何を感じていたかがわかって面白い。

当時は、日銀の施策で景気が回復するのだから、日銀がなんとかすべきみたいな論調があったと思うが、金利をいじったりお金の供給量を増やすことで本当に景気が回復するのだろうかという違和感を個人的には感じていた。
韓国企業などには、すでに製造業は負けていたし、海外ではまるでシェアを取れていないことは明らかだった。

実際に日銀の人たちも、金利の操作などで景気が回復するとは思っておらず、景気が悪い原因は生産年齢人口の減少にあるというのは調査から明らかだったようだ。
当時から少子化とは言われていはいたが、経済に深刻なダメージを与えるといった論調は聞かれなかった気がする。しかし、日銀などの内部で明らかだったようでレポートなども作成されている。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120831a.pdf

生産年齢人口の変化は10章などでも取り上げられており、参考になる。

日銀自体が、巨大なシンクタンクで、レポートも出しているので、今後も追いかけるべきだと思うには十分な説得力を持つ本になっていた。
他のレポートは
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2019/index.htm/
このあたりにある。

日本の景気に対する見方もちょっと変わったと感じている。
日本人の能力の変化というよりは、不良債券が多すぎたために、企業が新規の投資をすることが出来なくなり、人も雇えなくなり、古いものを古い人達が古いやり方で継続する以外に選択肢がなかった。
その間に、アメリカなどではIT企業が育ち、もはや勝ち目がないくらいに差が開いてしまったといった感じだ。
人も技術も古くなっても終身雇用で人を変えることもままならないというのは、不良債権に限らず、経済的な問題が社会全体で発生した時に、取り戻すのに時間がかかる要因になっているのだなと感じるなどする。

日本型の終身雇用でうまくいくためには、継続的な新卒採用とセットであるが、それも止まった期間があるので、知識や文化の継承もままならず、取り戻すのにあと20年くらいかかるのではないかと危惧する。


https://www.amazon.co.jp/dp/4492654852/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_EAihEbY7QR38B